2023.08.09

「タワマン節税」「マンション節税」の改正について

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに

令和5年6月30日に、国税庁より「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」という報道発表がなされ、ニュースなどで大きく取り上げられました。

「タワマン節税廃止」「マンション節税改正」など、ニュースなどで見聞きした方も多いのではないでしょうか?

「マンションは節税になると聞いていたが、影響があるのだろうか?」とご心配な方、「うちは、タワマンじゃないから大丈夫!」と思われた方、どちらの方にも影響がある可能性がございます!

今回のコラムでは、

  • いわゆる「タワマン節税」「マンション節税」とは?
  • 具体的にはどう変わる?
  • 注意点

についてご説明いたします。

いわゆる「タワマン節税」「マンション節税」とは?

そもそも、相続税における「タワマン節税」「マンション節税」と呼ばれる節税方法とは、どのようなものなのでしょうか?簡単にご説明したいと思います。

相続税では、相続で取得した財産を、国税庁が定める「財産評価基本通達」という通達に基づいて評価していくことになります。

現金や預金の場合は、その金額がそのまま相続税の評価額になるため、とてもシンプルでわかりやすいのですが、マンションの場合は、評価方法が少々複雑でわかりにくくなっています。

具体的には、マンションの建物(家屋)部分と土地(宅地)部分に分けて評価するのですが、その際の計算方法は以下のようになっています。

 建物(家屋)部分:固定資産税評価額×1.0
 土地(宅地)部分:マンションの敷地全体の面積×共有持分×平米単価(路線価等)

このとき、マンションの階数による価格補正は行われず、単純に面積の持分で按分した計算方法になっています。

一般的に、マンションの市場価格(売買価格)は、同じ面積なら高層階の方が高く、低層階の方が低く設定されています。

それなのに、相続税の評価額の計算方法では、階数による価格補正がされていない…。

この「市場価格と相続税評価額の乖離」を使った節税方法のことが、いわゆる「タワマン節税」「マンション節税」とよばれています。

「財産評価基本通達」について、詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
▼国税庁HP「財産評価基本通達」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/01.htm

具体的にはどう変わる?

それでは、具体的に、相続税の評価方法がどう変わるのかについて、ご説明したいと思います。

これまでの相続税の評価方法では、市場価格との乖離の原因となる階数などの価格補正がされていませんでした。

今回の改正では、まず、マンションの「①築年数」「②総階数」「③所在階」「④敷地持分狭小度」の4つの指数に基づいて、「評価乖離率」を求めます。(評価乖離率の計算式は以下の通り)

評価乖離率=①×△0.033+②×0.239+③×0.018+④×△1.195+3.220

そして、この「評価乖離率」が1.67倍を超える場合に、改正後の計算式で評価を行うことになります。

改正後の計算式は次の通りです。

現行の相続税評価額×当該マンション一室の評価乖離率×最低評価水準0.6(定数)

(※「現行の相続税評価額×当該マンション一室の評価乖離率」を市場価格とみなして、その価格に0.6をかけたものを相続税評価額としています。)

その他の注意事項は、以下の通りです。

・2階建以下のマンションや二世帯住宅は含まない
⇒逆に言うと、タワマンだけでなく、3階建以上のマンションなら、改正後の計算方法が適用になる可能性があるということです。

・「評価乖離率」が1.67以下の場合は、現行の相続税評価額×1.0
⇒今回の改正は、市場価格との乖離率が高い(1.67倍を超える)場合に適用されるため、乖離率がそこまで高くない場合は、現行の評価方法のままで、変わりはありません。

・「評価乖離率」が1.0未満の場合は、現行の相続税評価額×評価乖離率
⇒このようなケースはあまり無いとは思いますが、要は、現行の相続税評価額より、市場価格が低いということです。その場合は、市場価格で評価して良いということです。

・令和6年1月1日以後の相続等又は贈与により取得した財産に適用
⇒令和6年1月1日以後の「購入」ではなく、「相続等又は贈与により取得」です。すでに所有しているマンションを相続した場合にも適用されます。

さらに詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
▼国税庁報道発表「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」
https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0023006-018.pdf

注意点

今回の改正の中で、特に注意していただきたいのが、改正後の計算方法が、市場価格と相続税評価額の「乖離率」で判断されるということです。

ということは、「タワマン」以外の通常のマンションでも、乖離率が高ければ、改正の影響を受けることになります。

また、最近は、マンションの市場価格と相続税評価額の乖離を使った節税方法に対する引き締めが厳しくなってきており、以前ほどの節税効果が見込めなくなってきています。

今後、生前対策をしたい場合には、生命保険・生前贈与・養子縁組など、他の対策を検討した方が良いと言えるでしょう。

生前対策については、以前のコラムでもご紹介しています。参考までにこちらの記事もご覧ください。
▼【相続対策】非課税枠が使える生命保険とは
https://www.earlycross.co.jp/souzoku/seimeihoken/
▼相続税対策のための生前贈与手法 4選
https://www.earlycross.co.jp/souzoku/gift-tax-selection/
▼相続対策における養子縁組の活用
https://www.earlycross.co.jp/souzoku/use-adoption/

おわりに

いかがでしたか?今回のコラムでは

 「タワマン節税」「マンション節税」の改正

についてご説明いたしました。

「タワマン節税」「マンション節税」に関しては、昨今、引き締めが厳しくなってきています。

今後、生前対策をされたい場合には、他の方法で対策した方が良いことがおわかりいただけたかと思います。

福岡相続テラス(税理士法人アーリークロス)では、様々な生前対策のご提案を行っております。

ご自身にはどのような生前対策が最適なのか?をお知りになりたい方は、お気軽にご相談下さい。

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