2023.04.21

生前対策にもなる?障害を持つ家族への非課税贈与「特定贈与信託」とは

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに

相続時の障害者控除以外に、相続税を抑えて障害を持つ家族へ財産を渡す方法とは

もしも相続が発生してしまったら、障害を持つ家族が納める相続税に不安があるのではないでしょうか。

相続時には「障害者控除」という相続税額控除の枠組みがあるものの、生前から対策ができる「特定贈与信託」という制度も存在します。

今回の記事では、この「特定贈与信託」について詳しく説明していきます。

特定贈与信託とは?

特定の障害者を受益者として信託契約(特定障害者扶養信託契約)をし、特定障害者の方の生活の安定と療養の確保をはかる制度です。

この制度を利用することで、障害を持つ家族へ、受託者を通じて最大で6000万円まで非課税で贈与することができ、障害者に必要な支援やサービスに対する資金を安定して提供することが可能となります。

特定贈与信託は、障害者にとって安心な生活を送るための貴重な制度のひとつです。

ただし、信託財産の選定には注意が必要です。障害者の生活に必要な支援やサービスに対して、信託内容を慎重に検討することが大切です。

※根拠法令:相続税法21条の4 

委託者と、受益者、受託者について

信託という言葉に、馴染みがない方もいらっしゃると思います。

信託契約は委託者と、受益者、受託者の三者によって成り立ちます。

例えば、金銭を信託財産とする特定贈与信託のケースですと、

〇委託者・・・財産を託す側

〇受益者・・・財産を受け取る側(この場合は障害を持つ家族)

〇受託者・・・委託者から財産を委託され、委託者に代わって、信託契約に基づいて受益者に財産を託す役割を担います。

つまり、受託者は財産を管理し、受益者に利益を託すための中継者となるわけです。

要件

受益者の要件と限度額

以下が特定贈与信託の、受益者の要件と、非課税限度額です。

〇特別障害者(身体障害者手帳1級2級、精神障害者保険福祉手帳1級所有者 等):6000万円

〇特別障害者以外の特定障害者(知的障害者、精神障害者保険福祉手帳所有者 等):3000万円

※根拠法令:相続税法施行令第4条の8
 該当の障害者手帳所持者以外にも、年令65歳以上の方で、上記障害者に準ずるものとして市町村、特別区の区長または福祉事務所長等の認定を受けている方等も対象になります。

上記の通り、障害の程度によって利用できる特例や限度額が異なるため、ご注意ください。

信託できる財産と受託者

現預金以外にも、不動産など

信託できる財産は、金銭だけではありません。次のように、相続税法施行令第4条の11により次の財産であることが決められています。

一 金銭

二 有価証券

三 金銭債権

四 立木及び当該立木の生立する土地(当該立木とともに信託されるものに限る。)

五 継続的に相当の対価を得て他人に使用させる不動産

六 特定障害者扶養信託契約に基づく信託の受益者である特定障害者の居住の用に供する不動産(当該特定障害者扶養信託契約に基づいて前各号に掲げる財産のいずれかとともに信託されるものに限る。)

受託者にできる機関:信託会社

受託者にできる機関は、特定障害者扶養信託契約に基づく信託に関する事務を取り扱う信託会社です。

注意! ほかの家族信託のように、受託者を個人に指定することはできません。

信託銀行や、他に信託業免許を取得している不動産会社などがこれに該当します。

非課税枠を受けるためには、受託者であるこれらの機関を経由して「障害者非課税信託申告書」を税務署に提出する必要があります。

おわりに

いかがでしたでしょうか。以上が特定贈与信託のご説明でした。

障害を持つ家族と、支えてくれる周りのためにもぜひ生前対策をご検討ください。

相続テラスでは生前対策についても1時間無料相談を行っています。お気軽にお問い合わせください。

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