2021.01.01

遺産分割協議の必要性

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

この記事をシェアする

友だち追加

はじめに

相続が発生した場合には遺言書等があるときは、その遺言書等に基づき財産・債務の帰属が確定しますが、その相続に関して相続人が複数人で、これらがない場合には相続人間で分割協議を行い財産・債務の帰属を確定することになります。

しかし、実際には分割協議を行わないで相続手続きを行う(行わない)こともしばしば見受けられます。

実際にご自身のまわりで相続が起きた場合に分割協議を行い分割協議書まで作成すべきかどうか、よく分からず悩んでいませんか?

この記事で紹介する「分割協議とは」「分割協議はいつまでに?」「分割協議書は必要?」について理解すれば、相続にあたり分割協議書を残すべきかどうかが分かり、後々の相続にあたっての不要な係争を避け、相続税の特例の適用の有無についても理解でき過大な納税をせずに済むかもしれません。

なぜなら、相続税は分割協議が済んでいるかどうかによる課税価格・税額から特別控除を控除して計算する仕組みとなっているのですが、これらの特例の中には分割が済んでいることを前提として制度が設けられているものがあるからです。

また、分割協議自体は口頭でも有効とされますが後述するトラブル回避や課税当局への提出書類として「分割協議書」を作成する必要性についても述べることとします。

この記事をお読みいただくことで分割協議の必要性や相続税額への影響についてご理解いただくことができます。

遺産分割協議とは

亡くなられた方が生前に遺言書をしたためていた場合にはその内容に従って相続等をすることとなりますが、遺言書がない場合には共同相続人間で話し合いのうえ、財産・債務を帰属させる必要があります。

この話し合いの結果を文書化したものが分割協議書となります。

この分割協議書を以て、各金融機関の手続きや法務局での不動産登記手続きなどを行うことが一般的となっています。

なお、遺産分割協議そのものは口頭でも有効とされ、金融機関などにおいては分割協議書がない場合でも所定の様式に従い実印等を具備した書面により手続きを行うことも出来ます。

また、不動産登記においてもご自身でなされる場合を除き、司法書士等が不動産のみの分割協議書(いわゆる一部遺産分割協議書)を作成してくれるケースもあります。

遺産分割はいつまでに?

原則として分割協議そのものには期限はありませんし、また昨今のコロナ禍や財産・債務及び相続人様の状況(遠方に兄弟が多数など)等によりなかなか分割協議そのものが進まないケースがあります。

この場合相続人全員で話し合いがまとまらない状況を「未分割」といいます。

なお、話し合いがまとまらないことをもって税務署が相続税の申告を待ってくれるということはないため、たとえ未分割であったとしても原則、相続の開始を知った日から10ヶ月以内に「未分割で仮に申告しておきます」という申告書を税務署へ提出する必要がありますのでその点にご留意ください。

以下に未分割で仮に申告書を提出する必要性等について述べます。

⒈税務上の影響

⑴相続税

「未分割」で相続税の申告書を提出する場合には次の税務上の優遇が受けられませんのでご留意ください。

  • ①配偶者の相続税の税額軽減
  • ②小規模宅地等の評価減の特例
  • ③相続税の物納・各種納税猶予

なお、➀、➁についてはその提出する未分割の相続税申告書に3年以内に分割見込みである旨を記載した書面を添付することにより、分割なされたときの確定申告で適用を受けることが出来ますのでくれぐれも当該書面の提出漏れにご用心ください。

➂については適用を受けることが出来ませんので該当財産についての一部遺産分割協議を行うなどの対応が必要です。

⑵所得税

賃貸アパートなどを「未分割」のままにしておくとそのアパートからの家賃収入等は各相続人の法定相続分で取得したものとして取り扱われるため、それぞれが確定申告等を行う必要が生じる場合があります。

手続きも煩雑となり、社会保険等の負担等が増加するケースもあります。

一つの目安として相続開始年の翌年3月15日までに当該不動産についての分割協議がされていることが望ましいといえます。

⒉法務上の影響

相続人間で話し合いがまとまらない場合には各共同相続人の法定相続分に応じて共有となっているものとされ次のような点で手続きが煩雑となります。

  • ⑴自宅やアパートなどの修繕に全員の同意・費用負担割合の調整が必要
  • ⑵不動産の売却等に全員の同意が必要
  • ⑶金融機関の出金手続きが制限される(一定額までの特例あり) など

分割協議“書”の必要性

相続人間の仲も良好で、不動産登記も不要かつ、相続税も生じない場合には原則として遺産分割協議書を作成する必要性はないのかもしれません。

確かに「相続」は原則として共同相続人間での話し合いを以てなされるものであり、その理解は正しいのかもしれません。

ただし、昨今のメディアによる相続への社会的認知の向上や人口構造上、相続人が高齢化し、兄弟間の相続における甥姪等に代表されるように相続人以外の親族も「相続人ではないけれど他人事じゃない」方々もよくお会いいたします。

そんな折に、「父が亡くなったけど、そもそもお祖父さんの財産(実家の土地で名義がお祖父さんのままなど)の分割が終わっていないんじゃないか?!当時の書類も何もないし、当然こっちにも貰う権利はある!」などとならないために、上記のように円満な相続の際にこそ分割協議書及び財産目録(一覧表)などを残すことが有効なのではないでしょうか。

おわりに

本記事では、遺産分割協議についてその内容及び必要性についてご案内いたしました。

この記事を参考に、ご自身の周りで相続が生じた場合に分割協議を行い、分割協議書を作成すべきかどうかをご判断いただき不利益が生じないようにご注意ください。

また、分割協議書の作成については各種専門知識等を要する場合も少なくありません。

税理士法人アーリークロスでは現在・過去・未来の相続にかかわらずお問い合わせいただくべく司法書士・行政事務所との提携を行い対応可能な体制を整え、初回面談無料にて相続専門チームで相談をお受けしていますのでお気軽にご連絡ください。

この記事をシェアする

友だち追加
  • 平日夜間対応
  • 事前予約にて
    土日祝対応
  • テレビ会議対応

相続に関すること、お気軽に
ご相談ください。相談は無料です。