2023.06.21

相続土地国庫帰属制度と相続放棄

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに

相続土地国庫帰属制度をご存知でしょうか?

相続土地国庫帰属制度とは、「相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した者が法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を求めることができる制度」です。

相続した土地で、「遠くに住んでいて利用する予定がない」、「管理が必要だけど、負担が大きい」といった理由により土地を手放したいというニーズが高まっているため、この制度が創設されました。

これまでは、すべての相続人が相続放棄を選択し、財産の引取り手がいなくなった場合にその財産は国庫帰属になるというように、不要な土地のみならず被相続人に係るすべての財産を手放すしかなかったのですが、この制度により不要な土地のみを国に引き渡すことができるようになりました。

しかし相続放棄による土地の引き渡しと異なる点も多数ありますので、この記事では相続土地国庫帰属制度と相続放棄による土地の引き渡しについてそれぞれご説明いたします。

相続土地国庫帰属制度について

この制度は令和5年4月27日に施行されました。

以下、この制度の概要についてご説明いたします。

趣旨

本制度は所有者不明土地の拡大を防ぐために設けられました。

所有者不明土地とは、相続等の際に土地の所有者についての登記が行われないなどの理由により、不動産登記簿を確認しても所有者が分からない土地、または所有者は分かっていてもその所在が不明で所有者に連絡がつかない土地のことです。

このような土地が日本各地で増加しており、その面積を合わせると、九州よりも広く、国土の22%にも及んでいます。

相続土地国庫帰属制度によって、土地を相続した方が不要な土地を手放して所有者不明土地の発生を予防することが期待されています。

申請ができる人

相続又は相続人に対する遺贈によって、土地の所有権又は共有持分を取得した者」が申請可能です。

売買や生前贈与で土地を取得した方等はこの制度を利用することができません。

一定の要件

管理コストの国への転嫁や土地の管理をおろそかにするモラルハザードが発生するおそれを考慮して一定の要件が設定されています。

⑴土地の要件

通常の管理又は処分をするにあたり過分の費用又は労力を要する土地は、国に帰属ができない土地となります。

例えば、

・建物がある土地
・担保権や使用収益権が設定されている土地
・境界が明らかでない土地、帰属や範囲について争いがある土地

などです。

詳しくは法務省の下記サイトをご参照ください。

▼法務省 相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00461.html

⑵負担金・審査手数料

国庫に帰属させるためには、10年分の土地管理費相当額の負担金の納付が必要です。

最低でも20万円となり、田畑や森林は面積に応じ算定されます。

▼法務省 相続土地国庫帰属制度の負担金
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html

また、審査に要する実費等を考慮して審査手数料(一筆14,000円)の納付も必要です。

相続放棄による財産の国庫帰属

相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がないというのが相続放棄です。

この相続放棄をするためには、家庭裁判所にその旨を申述しなければなりません。

申述は、相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内にしなければなりません。

申述に必要な費用は収入印紙800円分と連絡用の郵便切手のみです。

民法は「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人とする」と定めています(民951)。

戸籍上の相続人がいないときや相続人全員が相続放棄をした場合に、相続財産の管理可能性がないため、民法は相続財産事態に法人格を付与し(相続財産法人)、相続財産管理人を付することで相続財産の管理および清算を行うことができるようにしています。

相続財産管理人は、被相続人の債権者に対して被相続人の債務を支払うなど清算を行い、清算後残った財産を国庫に帰属させることになります。

また特別縁故者へ財産分与することもあります。

おわりに

この記事では、相続土地国庫帰属制度と相続放棄による土地の引き渡しについてそれぞれご説明いたしました。

同じ国庫帰属とはいえ、両者には費用や手続きの点で違いがあります。

相続土地国庫帰属制度を利用するべきなのか、そもそも遺産分割協議内容はこれでいいのか、など相続のことでお困りの方はお気軽に相続テラス(税理士法人アーリークロス)にご相談下さい。

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