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みなし譲渡とは何か-個人から法人に資産を譲渡するときには要注意

本日は、税法の中でも感覚的に理解しにくい「みなし譲渡」について解説していきたいと思います。知らないと思わぬ税金(場合によっては、所得税・法人税・贈与税のトリプルパンチ)が生じてしまう可能性がありますので注意しましょう。まずはみなし譲渡の前提となる譲渡所得についてご説明致します。

譲渡所得とは

譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいいます(所得税法33条1項)。土地や骨董品等を売った際に生じるものになります。譲渡所得に課税するのは、資産の値上がり益(キャピタル・ゲイン)に対して課税するためと言われています。そのため、事業所得(事業による所得)に該当するようなものは、資産の値上がりによる所得ではないため、譲渡所得から除かれています(33条2項)。譲渡所得については、以下の算式で計算されます。

譲渡所得 = 収入金額△(取得費+譲渡費用)△特別控除額

みなし譲渡とは

1.個人間の贈与の場合

例えば個人Aから個人Bへ資産を贈与(無償譲渡)した場合、譲渡所得は生じません。所得税では清算課税説という概念を採用していると言われ、資産の支配が他に移転(要は譲渡です)した際に所得が実現したと考え、その時点での値上がり益に課税することとしております。贈与も対価はないですが、譲渡に含まれます。そのため、清算課税説で考えると贈与の時点でAに対しては時価と取得費の差額(この時点での値上がり益)について課税することになります。しかし、贈与した個人Aに対して課税をするのは酷であるため、政策的な配慮により贈与の時点では課税しないことになっています。ではどうするかというと課税の繰延を行うことになります。例えば、個人Bがその後個人Cに個人Aから贈与された資産を売却(有償譲渡)するときに、個人Aが保有している間に生じたキャピタル・ゲインと個人Bが保有している期間に生じたキャピタル・ゲインに対して課税することになります。以下の例で確認してみましょう。

①個人Aの取得価額 100万円

②個人Bに贈与したときの時価 200万 (Aが保有している期間の値上がり益100万)

③個人Cに売却したときの価額400万円 (Bが保有している期間の値上がり益200万)

このとき、Bには収入金額400万から個人Aの取得原価100万円を引いた300万円の譲渡所得(特別控除等はここでは無視しています)が生じ、これに対して課税されることになります。B保有期間の値上がり益は200万円ですが、Aからの贈与時に課税していないため、Cへの売却時にA保有期間の値上がり益100万円も併せて課税していることになります。

まとめると、個人間の贈与では譲渡所得は認識しないが、課税の繰延を行うために贈与者(個人A)の取得費が引き継がれ、贈与者(個人A)保有期間の値上がり益についても受贈者(個人B)が譲渡したときに課税されることになります。

なお、譲渡所得(所得税)には課税されませんが、受贈者(個人B)には贈与税が課税されますのでご注意下さい。

2.個人から法人への贈与

例えば、個人Aから法人Dへ資産を譲渡するように、受贈者(贈与を受ける者)が法人の場合はどうでしょうか。この場合には贈与した個人Aに譲渡所得が認識され、所得税が課税されることになります。個人間の場合には課税されないのに、個人から法人へ課税されるはなぜでしょうか。個人と違い法人には継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)というのがあり、原則として(あくまで理論上ですが)永久に存続することが前提となっています。そのため、法人に贈与した際に課税の繰延が行われてしまうと、永久に課税が繰延べられ永久に課税ができないことになってしまいます。そのため、個人から法人への贈与の際には、課税の繰延をせず、その時点で個人に対して譲渡所得を認識することになります。これをみなし譲渡と呼びます。無償の取引であったとしても、時価で譲渡があったとみなされて譲渡所得が計算されますまた、贈与を受けた法人Dの側でも受贈益という益金(利益)を認識することになり、法人側でも課税されることになります(ごく限定的な状況では、租税特別措置法40条の3の2に例外規定あり)。

例えば、個人Aが取得費100万円時価200万円の資産を法人Dへ贈与したとします。

個人Aについてはみなし譲渡となり、200万△100万=100万円に対して所得税が課税されることになります(特別控除等については考慮していません)。

法人Dについては200万の受贈益(利益)が生じることとなり、(他の取引が一切なかったとすると)この200万円の受贈益に対して法人税が課税されることになります。

また、この贈与により、法人Dの株価が上昇した場合、個人Aから法人Dの株主への贈与があったとみなされます(同族会社のみ)。この場合法人Dの株主に対して贈与税が課税されます。つまり、最悪のケースでは、贈与者個人A、受贈者法人D、その株主の3者にそれぞれ、所得税、法人税、贈与税が課税されることもあるのです。トリプルパンチですね。

個人から法人への贈与の際には、事前に税理士とよく検討を行うようにしましょう。

小西

 

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