2020.03.16

個人で事業を行う子息への援助と課税関係の整理

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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更新日:2020-03-25

はじめに

事業を行う子息への援助は原則として贈与税等の対象となりますが、一定の要件を満たすことで課税関係が生じない場合や相続税の負担が異なる場合があります。

              前提条件        (単位;百万円)

財産状況
現金10 銀行借入100
債務超過▲90  

財産状況
土地100 銀行借入0
預金10  

① 子は事業を始めるに当たり親の連帯保証により銀行から借入れ

② 親は土地(先祖代々の土地で取得費不明)以外にはさしたる財産はない

③ 子の事業は開業当初は堅調であったがここ数年は芳しくなく債務超過で事業に好転の兆しもない

④ 推定相続人は、子1人のみである

⑤ 親はかわいい子のために土地を担保に入れて銀行から100を借入代わりに返済(代位弁済)する予定

取り得る対応と原則的な課税関係

対応方法 課税関係
親から子への金銭援助 贈与税(4,800万円) なし
親から子への貸付金 相続税(1,820万円) なし
親が土地を売却して代位弁済 贈与税(4,800万円) 譲渡税(1,930万円)
子が相続後に売却 相続税(1,820万円) 譲渡税(1,930万円) なし

各対応方法に関する税務上の特例

(1)金銭援助(原則:贈与税4800万円→特例:負担0)

  1. 子が債務超過であることを証明した場合には贈与税が非課税となります。(相続税法8条)
  2. 適用には貸倒損失等の要件と同様の債務超過であることが求められます。

(2)貸付金(原則:贈与税4,800万円 貸付金:相続税1,820万円or負担0

  1. 子が債務超過であることを証明した場合には債務免除をした場合には金銭援助と同様に贈与税が非課税となります。(相続税法8条)
  2. 金銭消費貸借契約書を具備し、返済の事実などが確認できない場合には当初から貸付金ではなく贈与として処理する場合もあります。

(3)土地を売却して代位弁済(原則:贈与税4,800万円、譲渡税1,930万円→負担0

① 子が債権(求償権)の放棄を受けた場合は(イ)と同様

② 親の譲渡が保証債務の履行に伴う場合には、譲渡税の課税が軽減される

③ ②の規定の適用を受けるには次の点に留意する必要があります。

 イ)保証債務契約時において既に債務超過でないこと

 ロ)求償権の行使が現に公使不能であること(概ね①の要件と同様)

 ハ)所得税の確定申告書にこの規定の適用を受ける旨の記載があること

(4)相続後に売却した場合 (原則:相続税1820万円+譲渡税1930万円 →特例:相続税1820万円(そのまま)、譲渡税1621万円

① 土地を事業のように供している等一定の要件を満たす場合は小規模宅地の特例の対象となり得る

② 相続、贈与により引き継いだ資産の所有期間は引き継がれるため税率が39.63%ではなく20.315%が適用される

③ 相続税が生じた場合に相続開始後3年10月以内に売却した場合には譲渡税の課税が軽減される

④ ③の適用を受けるためには、次の要件を充足する必要があります。

 イ)所得税の申告書ノ提出期限までに相続税が確定していること

※所得税の申告書の提出までに確定していない場合には更正の請求

 ロ)所得税の確定申告書にこの規定の適用を受ける旨の記載があること

まとめ

事業をおこなっていく上で債務超過に陥っている場合には親の財産を当てにするケースも少なくありませんが、債権債務を生前に適切に処理することで税金が大きく異なります。

前述の親子の場合には、生前に保証債務の履行のための譲渡所得の特例を用いた返済スキームを活用し、生前の整理を検討することも重要です。

また、今回の例は子1人のみが相続人であるため割愛しましたが、生前の援助は遺産分割に於いてトラブル(遺留分の侵害)などに発展する可能性があるうえ、適正な手順や手続を踏む必要があるため第三者として弁護士をはじめとする第三者に依頼することが望ましいといえます。

福岡相続テラス(税理士法人アーリークロス)では相続に関する無料相談を行っておりますので、お気軽にご連絡ください。

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