2021.03.19

住宅取得等資金の贈与について

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに

現預金を多くお持ちの方で将来発生する相続において子供に重い税負担を強いることにご不安の方もおられるのではないでしょうか。

またせっかくなら生前に資産を譲り渡したいとお思いの方もいるのではないでしょうか。

この記事でご紹介する「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」の解説を読んでいただければ、有効な生前贈与を行うことで将来へ向けた相続対策が可能になります。

なぜなら、子や孫に住宅購入資金を贈与してご自身の財産を減らして相続対策をし、子や孫の住宅購入の負担を減らして喜んでもらえる上に贈与税も一定の要件を満たせば非課税になるのです。

この記事では、「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」の概要、要件、注意点についてご紹介いたします。

この記事を読み終えると、「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」について理解が深まり、相続における生前対策を検討することができます。

「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」の概要

直系尊属である両親、祖父母などから住宅取得資金として贈与を受けた場合に一定の金額が非課税となる制度です。

この制度は、単独で使うことも、相続時精算課税制度と組み合わせて使うことも可能です。

限度額は段階的に下がってきていますが、それでも基礎控除額の110万円に加えて最大で1,500万円(令和3年3月時点)が非課税になる可能性があります。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm

適用要件:贈与者・受贈者の要件

⑴贈与者の条件

受贈者の直系尊属(父母、祖父母等)であること

⑵受贈者の条件

  • 贈与者の直系卑属(子や孫)であること
  • 贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること
  • 平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」を受けたことがないこと
  • 自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、又はこれらの方との請負契約等により新築若しくは増改築等をしたものではないこと
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅用の家屋を新築や取得等をし、その家屋に居住すること
  • 贈与を受けたときに日本国内に住所を有していること

※要件を満たさないとこの特例は適用できませんので必ず専門家にご相談ください。

適用要件:非課税の対象物と用途の要件

⑴住宅に関する要件

イ 新築住宅

  • 登記簿上の床面積(マンションの場合、その専有部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下
  • 家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が自身の居住用であること

ロ 中古住宅

  • 新築住宅の要件に加えて次の要件を満たす必要があります。
  • 建築後20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)であること
  • 新耐震基準に適合する住宅であることを書類により証明できること
  • ※もしこの2つの要件を満たさない場合は、住宅購入後に耐震工事を行った上で贈与を受けた年の翌年3月15日までに耐震基準に見合ったことを証明しなければなりません。
  • 証明できない場合は「既存住宅売買瑕疵保険」に加入することで要件を満たすことが可能です。

ロ 増改築の要件

  • 増改築後の住宅用家屋において、その登記簿上の床面積が50㎡以上240㎡以下
  • 床面積の2分の1以上が受贈者の居住用に使用されていること
  • 増改築等にかかる費用が100万円以上であること

⑵用途に関する注意点

  • 贈与を受けた全額を住宅購入等にあてること
  • 住宅ローンの返済のために金銭を受贈する場合にはこの特例は適用されません。

適用要件:申告義務

贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書を納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

  • また下記一定の書類を添付する必要があります。
  • 戸籍の謄本
  • 登記事項証明書
  • 新築や取得の契約書の写しなど

注意点:居住の意義と期限

贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅の引き渡しを受け、遅滞なく居住することが必要ですので贈与を受けるタイミング入居の時期などに注意が必要です。

新築住宅などで工事が延期してしまうと予定より入居が遅れてしまうこともあります。

工事が長引きそうな事情がある場合は、贈与する時期をずらして入居予定日と同じ年に贈与するなど、贈与と入居のタイミングを見極めて時期を決めておくことが重要です。

注意点:「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」が使えなくなる可能性がある

「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」とは、亡くなった人が居住していた土地が一定の要件を満たす場合に、相続税計算時の評価額を最大80%減額できる制度です。

この特例を使うためには「自宅を相続する人が、配偶者もしくは亡くなった人と同居をしていた親族であること」という条件を満たす必要があります。

しかしその両者とも存在しない場合には、「亡くなった人と別居していて、かつ、3年以上自分の持ち家に住んでいない親族」などの一定の要件を満たす場合には特例を受けることができます。

いわゆる「家なき子特例」です。

この「家なき子特例」を将来子供に使わせたいのであれば、要件等の確認のため必ず専門家にご相談しましょう。

おわりに

今回は、「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」についてご説明いたしました。

非課税限度額が大きく生前対策としても非常に有効な制度ですので、ご検討されたい方は是非一度弊社にお越しになりませんか?

福岡相続テラス(税理士法人アーリークロス)では、初回面談を無料で行っております。

お気軽にお問い合わせください。

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