2022.07.20

相続後の自己株式による納税資金準備はお気をつけください

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに

会社オーナーの相続で納税資金や遺留分の支払いにお困りでは有りませんか?


会社からお金を用意する方法として、自己株式の取得(いわゆる「相続金庫株」)があります。
しかし、手続きは注意しなければならない点があります。

なぜなら、相続金庫株は手続きをしっかりしないと特例の適用が受けられず、多額の課税をされる可能性があるからです。

この記事では、相続金庫株について、メリットと注意すべき点をご説明します。

会社オーナーの相続対策として大変有用なスキームの1つですので、ぜひご参考ください。

相続金庫株とは

会社オーナーの相続の特徴「資金繰りが難しい」

相続は、基礎控除を超えると10か月以内に相続税を金銭で一時に納付しなければいけません。
会社オーナーの場合、この相続税の納税に加え、他の相続人にバランスをとるためのお金も用意しなければいけないケースが多いです。(いわゆる代償分割)
そのため、会社株式を引き継いだ後継者は、この株式そのものには換金価値が実質ありませんので、相続税や代償金を支払うためのお金に苦慮するのです。

資金を会社から用意する方法

相続のために支払うお金(相続税、代償金)の準備を、会社から用意する方法としては以下の方法があります。括弧書きは会社から見た取引名です。


1.賞与でもらう(役員賞与)
2.会社から借りる(役員貸付金)
3.会社へ自己の資産を売却する(資産の買取)
4.会社へその会社の株式を売却する(相続金庫株)
この4つの方法について、それぞれ解説いたします。

1.賞与でもらう(役員賞与)

給与や賞与は所得税の総合課税として扱われます。つまり、年間でもらう金額が多いほど、課される所得税率が高額になりやすいです。
会社オーナーの相続税や代償金の支払いは高額になることが多く、例えば5,000万円を会社から賞与を出す場合、実効税率が約50%となりますので、半分は納税資金に充てることを踏まえると、会社は1億円を賞与として支払わないと手取りが5,000万円にならないのです。
そのため、賞与として支払うという案はあまりとりません。

2.会社から借りる(役員貸付金)

会社からお金を借りる場合は、返済計画を立てて返済を行わなければ、役員賞与として上記1.と同様の課税が行われる可能性があります。つまり、返済を要するという点では、銀行にする借金とあまり実態は変わりません。
しかし、いくらか銀行よりもコントロールは可能であるため、よくこの形態も見受けられますが、やはり税効率からみるとあまり良い策ではありません。
なぜなら、貸している会社では利息収入に対して法人税等が課され、個人は会社へ支払った利息は経費に参入できるわけではないからです。
そして、返済するには会社からの給与を増額し、所得税を支払った上で、そのお金で返済をする(また会社へ返す)という非効率的な対応をしなければいけません。
会社からお金を借りる手法は、基本的に一時しのぎ以上の活用はあまりしません。

3.会社へ自己の資産を売却する(資産の買取)

会社オーナーは会社株式が全体資産の大半を占めることが多く、この方法をとっても、あまり会社へ売る資産が無いというのが現場をみてきた印象です。
仮にこの方法をとる場合に気をつけるべき点は、不動産を会社へ売る場合です。
不動産を売るときには、所得税のみならず、買った側でも不動産取得税や登録免許税、司法書士登記費用等、思いの外様々な税や費用が生じます。相続した資産は取得費加算の特例がとれるから有利になると思い込み、買い手側の計算をせずに実行してしまうと思わぬ負担が後で課されることとなります。
また、自宅不動産を会社へ売却する事例もあるようですが、個人資産の会社への注入は後ほどトラブルになりやすいため慎重に行うことをおすすめいたします。

4.会社へその会社の株式を売却する(相続金庫株)

この方法は、故人が100%所有している会社であれば、ほとんど実害を受けず、資金調達しやすい方法といってもよいです。
なぜなら、100%所有している会社へ、その会社の株を売却しても、所有する割合は100%を維持しており、支配権は一切揺らがないからです。
ただし、この手法の注意点は①資金準備と②手続きです。

相続金庫株の注意点

① 資金準備

金庫株は、会社が株主から株を買い取るということですので、買い取る資金を準備する必要があります。
相続対策を入念に行い、予めしっかりと相続資金を用意している会社であれば問題ありませんが、そのような会社は今までほとんど見たことがありません。
そのため、相続後に急遽銀行へ交渉し、会社がお金を借りるケースが未だに多いです。
相続時に経営状態が良ければ借りれることもできますが、経営状態が悪ければ銀行もお金を貸してくれないかもしれません。経営状態が悪い状況にあっても、株の相続税評価が高額になるケースはよくあります。
会社でも相続対策の一環として、資金準備をしっかりと行いましょう。代表的な準備方法は生命保険を活用する方法です。

② 手続き

相続金庫株は、株式を譲渡する前にも一定の手続きを要します。

租税特別措置法施行令第5条の2
2 適用を受けようとする個人は、非上場会社に譲渡する時までに、一定の書面を、当該非上場会社を経由して所轄税務署長に提出しなければならない。(一部加筆)

この一定の書面提出を失念しないように気をつけなければいけません。

おわりに

いかがでしたか?この記事では
相続金庫株
についてご説明いたしました。
会社オーナーの相続や事業承継に関することは、お気軽に税理士法人アーリークロスにお問い合わせください。

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